注文請書の経理上の正しい取り扱い方法

注文請書の経理上の正しい取り扱い方法

税務調査では収入印紙は必ずチェックされます。もし、必要な収入印紙が貼られていない場合は、本来貼るべき金額とその2倍のペナルティーが科せられ、3倍の費用が発生します。しかも、そのペナルティーは税務上、損金にはなりません。そこで、今回は判断に迷いやすい注文請書に関する収入印紙、貼る金額について理解を深めましょう。
また、ちょっとした工夫で節税になるケースもあります。

注文請書とは?

そもそも、「注文請書」とは何でしょう。

「注文請書」とは、取引をする際に交わす契約書のひとつで、「注文請書」には品名、数量、納期、支払金額などといった契約条件が記されています。「注文請書」は「注文書」と誤解されるケースがありますが、「注文書」は、注文するお客様側、発注者が発行するものです。

一方、「注文請書」は、その注文に対して「引き受ける意思をあらわす」ために、注文された側、受注者が発行するものです。発注者が「注文書」を受注者に渡し、受注者が「注文請書」を発注者に渡すことで契約が成立します。

注文請書の書き方

次に、実際に「注文請書」を作成する方法を見ていきましょう。

業種、業態により多少異なりますが、基本は同じです。

記載事項

 

  1. 書類作成者の氏名又は名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(品名、数量、納期等)
  4. 取引金額、支払方法、支払期限
  5. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

取引金額は、消費税額を区分して記載するか、又は税込価格及び税抜価格を明記したほうがよいでしょう。

収入印紙が必要な場合は、決められた金額の収入印紙を貼付したら必ず割印をしましょう。

注文請書に収入印紙は必要か

「注文請書」には収入印紙が必要でしょうか。契約書ではなく、「注文請書」だからいらないという意見もあり、「注文請書」も契約書の一種だから必要という意見もあります。

結論は、名前を問わず、「実質的に契約の成立を証明する書面」に該当するものは収入印紙を貼る必要があります。
印紙税法基本通達第3条では、次のように規定しています。

(課税文書に該当するかどうかの判断)
第3条 文書が課税文書に該当するかどうかは、文書の全体を一つとして判断するのみでなく、
その文書に記載されている個々の内容についても判断するものとし、また、単に文書の名称又は呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断するものとする。

「注文請書」はどうでしょうか。

発注者から「注文書」が届き、受注者が「注文請書」を発注者に渡すことで契約が成立します。つまり、「注文請書」が「実質的に契約の成立を証明する書面」に該当することになります。「注文請書」が印紙税法上の課税文書、つまり印紙を貼るべき書面ということになります。

収入印紙はいくら?消費税はかかる?

「注文請書」は、印紙を貼らなければいけない書面だということがわかりました。ところで、いくらの収入印紙を貼らないといけないのでしょうか。

印紙税法では、文書の種類、取引金額に応じて、収入印紙の金額を決めています。
たとえば、「請負に関する契約」では次のとおりです。

記載された契約金額収入印紙の額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円超200万円以下400円
200万円超300万円以下1,000円
300万円超500万円以下2,000円
500万円超1,000万円以下1万円
1,000万円超5,000万円以下2万円
5,000万円超1億円以下6万円
1億円超5億円以下10万円
5億円超10億円以下20万円
10億円超50億円以下40万円
50億円超60万円
契約金額の記載のないもの200円

(注)平成9年4月1日から平成30年3月31日までの間に作成される建設工事の請負に関する契約書のうち、契約書に記載された契約金額が一定額を超えるものについては、税率の軽減があります。
参考:印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで

この「記載された契約金額」とは、消費税の税込金額でしょうか、それとも税抜金額でしょうか。

消費税額が区分記載されている場合又は税込価格と税抜価格の両方が記載されていること等により、消費税額の金額が明らかな場合には、消費税額の金額は記載金額に含めないこととされています。つまり、上記2(注文請書の書き方)で、「注文請書」の取引金額には、消費税額を区分して記載するか、又は税込価格及び税抜価格を明記したほうがよいとしたのは、このためです。

収入印紙の節税方法

消費税額を明確に区分して、収入印紙を節約する方法はわかりましたが、受注件数が多く、かつ、契約金額も大きい会社は収入印紙の額だけでも多額になります。

そもそも収入印紙自体を貼らなくてもいい方法はないのでしょうか。

国税庁の文書回答事例では、次のような回答があります。

「注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える」

つまり、電子メールを利用して注文を請けるという承諾を行った場合、現物の紙の文書を交付したことにはならないので、収入印紙が必要ないということになります。最近では、PDF等の電子文書に電子署名とタイムスタンプを付与して取り交わす契約が増えています。

電子署名は、改ざん等の不正を防ぐ意味もあります。

まとめ

収入印紙が必要かどうかを判断するのは、実務上、とても難しいケースが多々あります。もし、判断に迷った時は、顧問税理士か最寄りの税務署へ問い合わせすることをおすすめします。

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※デロイト トーマツ ミック経済研究所「クラウド型経費精算システム市場の実態と展望」(ミックITリポート2023年9月号:https://mic-r.co.jp/micit/2023/)より

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 税理士 大黒 たかのり

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大学卒業後、会計事務所に入所。税理士資格取得。開業にあたり一般企業での経験も必要と考え、00年運用会社入社。そこで合併に携わり、組織再編を現場で体験。2006年10月大手町会計事務所を開業。現在、初心者に向けた資産運用、節税対策の他、上場企業オーナーに対し、自社株対策や相続税対策を主に手がけている。また、後継者のいない中小企業に対して事業承継(M&A)を全国展開。日本経済新聞などマスコミ掲載実績多数。

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