財務分析の全体像財務分析によって明らかになる企業の収益性・安全性・効率性

財務分析の全体像財務分析によって明らかになる企業の収益性・安全性・効率性

これからの会計に求められていることは、企業の経営に対しての貢献です。税務申告のための会計は、IT化が進んでおり、人間が行う必要はなくなってきます。そこで、今回は、会計を企業経営に役立てるための財務分析について紹介していきます。

企業に必要とされる財務分析とは

会計のIT化が進む中で、会計自体の価値が変わってきました。企業の数字を集計するだけならば、人が行う必要はありません。ですから、どんどんIT技術を導入して自動化し、人が行う業務を削減していく傾向が表れています。このままいくと、現在経理の仕事をしている人はどうなるのでしょうか。

これからの会計は、税務のための経理ではなく、経営のための会計です。つまり、経理によって集計された数字を経営のための役立てる“財務分析”が必要になるということです。

財務諸表から収益性・安全性・効率性を読み取る

財務分析には、収益性分析・安全性分析・効率性分析があります。一つずつ具体的に説明していきます。

収益性分析

まずは、収益性分析についてです。
収益性分析とは、売上が、企業にどれだけの利益をもたらすかについてを分析することを言います。

収益性の具体的な指標としては、

  • 粗利率(%)=売上総利益 / 売上 ×100
  • 売上高営業利益率(%)=営業利益 /売上 ×100

が挙げられます。
粗利とは、売上高から売上原価を差し引いた売上総利益のことを言います。粗利率は、その割合です。粗利率については、業種によって大きく異なります。飲食店だと60%〜70%が基準です。一方で、サービス業については、原価(売上に直接比例する費用)は、ほとんどないので粗利率は100%に近い数字になります。

売上高営業利益率は、売上に対して、どれだけ営業利益が残るのかを表した指標です。いくら売上を引き上げても、この指標が低い場合は利益が残りません。

安全性分析

次は、安全性分析についてです。安全性分析とは、企業の短期的な支払能力や、資金調達の構成などから企業の財務的な安全性を分析することです。

安全性を表す指標としては、

  • 流動比率(%)=流動資産 / 流動負債 ×100
  • 自己資本比率(%)= 自己資本 /(自己資本+他人資本)×100

などがあります。
流動比率は、企業の1年以内に得られる現預金の額を表す流動資産と、1年以内に支払う現預金の額を表す流動負債を比較した指標です。流動比率が小さければ、短期的に企業の支払いが多いことになり、財務的な安全性としては低いということが言えます。

自己資本比率は、資金の調達源泉が自己資本であるか、他人資本(銀行融資など)であるかを表す指標です。自己資本比率が低ければ、他人資本の影響が大きくなり、経営の不安定性につながります。

効率性分析

最後は効率性分析です。効率性分析とは、企業が投入した資本をいかに効率的に利益につなげているかについて分析することを言います。

効率性分析の指標としては、

  • 総資本回転率(%) = 売上 / 総資本(当期・前期末平均) × 100
  • 売上債権回転日数(日)=売上債権 / 売上 ×365

総資本回転率とは、企業の資本をどれだけ効率的に売上につなげているかを表す指標です。これも業種によりますが、100%以上の企業については、効率的な資本の運用ができていると言えます。

売上が、実際にキャッシュになるには、一定の期間がかかるケースが多いです。その売上の回収までの平均日数を表すのが売上債権回転日数です。この指標が高ければ、売上債権の回収までに時間がかかっていることになり、売上が効率的にキャッシュにつながっていないことになります。

財務分析を企業活動に活用するために

これまで財務分析の各指標を簡単に紹介してきました。財務分析において重要なことは、これらの指標を計算した上で、同業他社比較や期間比較をすることです。同業他社と各指標を比較することで、経営的な弱点や強みを発見することができます。さらに、これらの指標を各期間で比較することで、企業活動の成果を正確に把握することができます。

また、企業活動に不可欠な銀行融資についても、財務分析は大きく関連します。銀行の企業評価は財務分析の各指標を点数化したものです。したがって、企業側としても、あらかじめ財務分析を行うことで、銀行からの指摘事項を対策しておくことができます。

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