将来発生する資産除去費用を現在の財務諸表に反映させる?資産除去債務の概要

消資産除去債務と聞いて、具体的に何のことか思いつく方は少ないと思います。資産除去債務は抽象的かつ会計的な概念なので難しい部分もあると思いますが、近年注目されているIFRS(国際会計基準)やUS-GAAP(米国会計基準)では以前から採用されている会計慣行です。

 

資産除去債務とは?

「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう(企業会計基準第18号、以下基準という)と定義されています。

定義を読んでも具体的にイメージは難しいと思いますが、賃貸不動産を考えるとわかりやすいと思います。賃貸不動産の契約書には、退去時に原状回復に係る費用を請求するとか、原状回復に係る費用は敷金から差し引く等の記載があると思います。これらは上記の「資産除去債務」の定義の有形固定資産の除去に関して契約で要求される義務に当たり、資産除去債務となります。
ここで定義される有形固定資産とは、財務諸表等規則で区分される有形固定資産区分される資産だけでなく、それに準ずるものも含まれます。例えば、建設仮勘定、リース資産、財務諸表等規則で投資その他の資産に分類される投資不動産なども対象です。
有形固定資産の除去とは、有形固定資産を用役提供から除外することをいい、具体例として売却、廃棄、リサイクルその他の処分方法が含まれるが、転用や用途変更は含まれないと基準に記載されています。
通常の使用とは、有形固定資産を意図した目的のために正常に稼働させることをいい(基準26)、通常の使用をしていないときに生じる資産を除去する義務は、資産除去債務の基準の埒外で、「固定資産の減損に係る会計基準」の範疇となります。
法律上の義務に準ずるものとは、債務の履行を免れることがほぼ不可能な義務を指し、法令又は契約で要求される法律上の義務とほぼ同等の不可避な義務が該当し、除去が企業の自発的な計画のみのよって行われる場合は、法律上の義務に準ずるものには該当しないこととなる(基準28)とされています。この基準で計上すべき資産除去債務は、あくまでも除去義務が不可避であるものに限定されていることに注意しましょう。

 

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資産除去債務の会計処理

資産除去債務について少しイメージができたかと思いますが、会計処理はどのように行うのでしょうか。
会計処理を行うに当たっては、

  1. 資産除去債務を算定する
  2. 資産除去債務に対応する除去費用を資産除去債務として負債に計上した後、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える

というプロセスになります。

具体的な会計処理例を見ていきましょう。

前提条件

  • 取得原価  20,000
  • 耐用年数 5年
  • 定額法
  • 除去費用の見積額  600
  • 割引率  2.0%
  • 期首に取得(×1年4月1日)
  • 5年後の期末に除去(×6年3月31日)
  • 実際の除去費用  620

取得時の会計処理(×1年4月1日)

有形固定資産20,543現金預金20,000
資産除去債務543

資産除去債務は発生した時に、有形固定資産の除去に要する割引前将来キャッシュ・フローを見積もり、割引価値で計上します。この条件の場合、割引率が2%ですので、600/(1.02)5=543で計算されます。
割引率は無リスクの割引率、例えば利付国債の流通利回りなどを用います。

期末の会計処理(×2年3月31日)

利息費用11資産除去債務11

時の経過により資産除去債務が増加、543×2%=11

減価償却費4,108減価償却累計額4,108

減価償却費の計上、20,543÷5年=4,108

除去時の会計処理(×6年3月31日)

利息費用12資産除去債務12

時の経過により資産除去債務が増加、(543+11+11+11+12)×2%=12

減価償却費4,111減価償却累計額4,111

減価償却費20,000÷5年+除去費用資産計上額543-4,108×4=4,111

減価償却累計額20,543有形固定資産20,543
資産除去債務600現金預金620
費用(履行差額)20

基本的な会計処理は以上となります。
資産除去債務の見積額に重要な変更が起こった時は、新たな会計処理が必要となりますが、この場合の会計処理については「資産除去債務に関する会計基準の適用指針(以下、適用指針という)」に設例が記載されています。

また、実務でよく見られる賃借建物に係る原状回復費用の処理については、建物等賃借契約に関連して敷金を支出している場合に、以下のような簡便的な処理が認められています。

前提条件

  • A社はB社との間で、Cビルの賃貸借契約を締結しており、A社はB社に敷金5,000を支払った
  • A社の同種の賃借建物等への平均的な入居期間は5年と見積もり

賃借時の会計処理

敷金5,000現金預金5,000

賃借年度の期末の会計処理

費用(敷金の償却)200敷金200

敷金5,000のうち、1,000について原状回復費用に充てられるため返還が見込めないと認められたことから、5年で費用配分することとした。

退去時

未収金3,800敷金4,000
費用(履行差額)1,200

5年後の退去時、実際には1,200について原状回復費用に充てられた。

また、会計処理を行った際の損益計算書上の開示は、利息費用(時の経過による資産除去債務の調整額)は、対象となる有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて開示、履行差額(資産除去債務の履行時に認識される差額)は、対象となる有形固定資産の除去費用に係る費用配分額と同じ区分に含めて開示されます(基準 54~58)。
つまり、資産除去債務の計上の対象となった有形固定資産の減価償却費が、製造費用に計上されるものであれば、利息費用も履行差額も製造費用に、販売費および一般管理費に計上されるものであれば、利息費用も履行差額も販売費および一般管理費に計上されることになります。
上場会社は注記すべき事項も細かく規定されていますので、ご留意ください。

 

資産除去債務を適用するにあたっての注意点

資産除去債務に係る費用は原則的に損金不算入

資産除去債務に係る費用配分額、利息費用は基本的には損金不算入となります。したがって、履行時までは税効果を考える必要がありますので注意しましょう。

IFRS(国際会計基準)と日本の会計基準との相違

資産除去債務の会計基準が公表された背景には、IFRS(国際会計基準)と日本の会計基準との差異を縮小することを目的とする両会計基準とのコンバージェンス作業の一環としての側面があります。しかし、IFRSと日本の会計基準には未だに以下に代表される差異が存在します。

日本基準

IFRS
範囲法律または契約上の義務及びそれに準ずるもの法定債務及び推定的債務
資産除去債務の見直し割引前キャッシュ・フローに重要な変更が起こったとき毎期最善の見直しを行う
使用する割引率無リスクの割引率貨幣の時間的価値、負債特有のリスクを反映
開示該当資産の減価償却費と同じ区分で開示財務費用として開示

実際に適用する場合には?

資産除去債務に関しては、「企業会計基準第18号 資産除去債務に関する会計基準」及び「企業会計基準適用指針第21号 資産除去債務に関する会計基準の適用指針」が公表されています。実際に適用の際には上記の基準を十分に熟読し、必要に応じて専門家の指示を仰ぐとよいでしょう。

 

まとめ

資産除去債務について、イメージすることができましたでしょうか。
資産除去債務の費用配分に係る除去費用は、先に述べた通り、損金算入できないので、実際には上場会社やその子会社、関連会社等以外の会社は適用していない会社が多いと思われます。しかしながら、もし、資産除去債務を適用すれば、業種によっては決算に与える影響額も多額になりますし、固定資産の管理の煩わしさも伴うということは、頭の片隅に留めておいてもよいかもしれません。

 

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