【ブックレビュー】消費税/有利選択の実務 知ってトクするタックス・マネジメント

【ブックレビュー】消費税/有利選択の実務 知ってトクするタックス・マネジメント

ベストターゲット

  • 消費税の申告作業にたずさわる経理担当者
  • 法人の決算・申告・調査に携わるCFO・財務責任者

読了目安

  • 3時間(1項目5分程度が目安です)

30秒で分かる! この本のポイント

  1. 消費税計算の、原則と特例の中で有利・不利という視点から、知っていれば状況に応じて選択適用できる規定や経理処理の簡便法などを、実際に役立つようにわかりやすく解説している。
  2. 内容は、売り上げに関わる有利選択、仕入れに関わる有利選択、中小事業者に関する項目、印紙税・源泉税などその他税目に関わるものなど、実務で役に立つ項目が幅広く体系的に紹介されている。
  3. 個別論点の説明で構成されているため、すべての内容を記憶する必要はなくどのような内容が記載されているかをおおまかに覚え、実際に該当する取引が発生した際に辞書的に使うことが効果的な使い方といえる。

要約

消費税の納付額は、顧客より預かった消費税から仕入れに係る消費税を控除して計算するため、どのように計算しても納付額は同じになると考えられがちです。
しかし、消費税の計算には原則と特例があり特例を選択できる場合には消費税の納税額が減少することも少なくありません。
また有利選択した場合のメリットは納税額だけではなく、消費税の計算は企業会計や法人税と別に行わなければならないため原則通り行うと手間がかかることも少なくありませんが、簡便的な方法がいくつも用意されており経理事務負の省力化というメリットもあります。
法人税は国際競争力強化や企業誘致のために引き下げられる傾向にあるが、一方で消費税は今後ますます複雑になること、増税になることなどが予想されます。そのため、消費税に対する正しい理解が欠かせないことはもちろんですが、消費税についても法人税と同様あるいは法人税以上にタックス・マネジメントが求められるようになります。 

「消費税/有利選択の実務 知ってトクするタックス・マネジメント」の構成

本書は、10章と102項目から構成されています。
各章では、売上や仕入からみた有利選択や中小企業であることでの有利選択、申告にあたって原則課税と簡易課税の選択など、申告面からの有利選択など様々な論点が網羅的に説明されています。
各項目は、その項目のポイント、どう処理することが消費税法上有利なのか、その項目に付随して知っておきたい事項、選択適用上の留意点といった形で実務に役立つようわかりやすく解説されています。 

本書では章分けがされており、章ごとに有利不利の選択項目が記載されています。

実務で使用するにあたって、時間を割かずに検索ができるような構成となっています。
内容も原則的な取り扱いを説明した上で、有利となる方法についての解説と手続き方法などが記載されており、段階的に理解ができるよう丁寧にまとめられています。
印紙の取得方法で税負担を減らす方法や、給与と外注の違い、派遣として仕入れ税額控除を取るためにはどのような要件を満たせばよいか、旅費規定を設定した場合の日当等の消費税の処理など、大半の会社が該当する項目を始め、割賦販売や工事の請負をした際の課税資産の譲渡等など、特定業種についても網羅的に記載されています。
その他、原則課税か簡易課税の選択にあたって留意することはなにか、課税売上がない場合に還付が受けられるかなどの手続きからみた解説もされています。

簡単に紹介させていただくと、以下のような内容です。

  • 印紙を買う際は、郵便局で買うと課税仕入れとならないが、チケットショップで買った場合はどうなるか?
  • 現物給与としてビール券などを支給した場合の消費税は?
  • 従業員に対して外注費を支払い、仕入税額控除を受けることができるのか?
  • 3万円以下の取引で請求書等がない場合は、仕入税額控除を受けることができないのか?
  • 土地と建物を一括で売却した場合の土地と建物の譲渡額の按分で最も有利なものは?

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「消費税/有利選択の実務 知ってトクするタックス・マネジメント」の使い方 ―該当取引が発生した際の片腕に!

本書は個別論点の説明のみから構成されており、すべての内容を記憶する必要はなくどのような内容が記載されているかをおおまかに覚え、該当する取引が発生した際に本書を片手に処理を行うような使い方が想定されます。
実際の業務でその都度確認していくことで、その項目を深く理解していくことができます。 

「消費税/有利選択の実務 知ってトクするタックス・マネジメント」の不足点 ―法人税・所得税の有利選択は別書籍を

本文内において、法人税や所得税の取り扱いの記載はありますが、消費税に重点をおいた書籍のため、消費税では有利でも法人税や所得税を踏まえた上での有利選択の記載はありません。
そのため実務においては、トータルしてどの処理がベストなのかという判断はご自身で行っていく必要があります。 

「消費税/有利選択の実務 知ってトクするタックス・マネジメント」の注意点 ―消費税改正ごとに常に最新版を

本書は同じタイトルの三訂版となっており、今回の改訂では消費税率の引き上げ、特定新規設立法人の免税制度不適用の創設、任意の中間申告制度などが加わっています。
消費税は改正のスパンが短くまた改正ごとのインパクトが大きいため、常に最新版を読むことを心がけてください。
たとえば、平成26年度消費税法改正でも簡易課税制度のみなし仕入れ率が不動産業は50%から40%へ引き下げられるなど、ひとつひとつの取引に関わる税務であるがゆえにその対象者も多くなっています。 

合せて読みたい本

  • 法人税/有利選択の実務 高橋敏則
  • 消費税率5%→8%変更時の申告書記載チェックポイント 近田順一朗
  • 図解 消費税のしくみと実務が分かる本 小池正明

経理プラスのこちらの記事もお勧めです。
経理プラス:書類1枚で数千万円? ―絶対に間違えてはいけない消費税の届出―
経理プラス:これだけ読めばOK! 不動産取引にかかる消費税 

著者略歴

高橋 敏則(たかはし としのり)

公認会計士・税理士
 昭和31年千葉県生まれ、中央大学商学部卒業。昭和55年公認会計士二次試験合格アーンスト・アンド・ウイニー会計事務所、監査法人を経て、独立し高橋会計事務所を開設し、現在に至る。

 

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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