【ブックレビュー】法人税の鉄則50(申告書からみた税務調査対策シリーズ)

【ブックレビュー】法人税の鉄則50(申告書からみた税務調査対策シリーズ)

ベストターゲット

  • 法人の決算・申告・調査に携わる、CFO・経理・財務責任者
  • 税務調査に関わる可能性のある実務家

読了目安

  • 3時間

30秒で分かる! この本のポイント

  1. 税務調査を意識して、企業の経理担当者がおさえておきたい法人税の「テッパン」ネタ50個の個別論点が解説されている。
  2. 各論点では、1.制度のあらまし、2.解説とチェックポイント、3.申告書の記載例の順で説明され、調査で指摘を受けない税務処理と申告書作成のポイントが分かる。
  3. 具体的な項目は、接待交際費や役員給与などの法人税で基礎的な項目、デリバティブやリース取引など判断に悩む機会の多い項目、営業収益や行為計算否認など税務調査で指摘されやすい項目など、法人の決算・申告・調査に携わる人間であれば確認しておきたい項目を網羅している。

要約

法人の決算・申告・調査に携わる人間であれば必ず確認すべき「鉄則」と言える基本事項がある。
経理担当者が知っていなければならないことは、基本事項といっても税務署による決算書・申告書の審理・調査に耐えうる内容でなければならない。

課税当局も内部的な研修を行っており、そのためには課税当局が公表している資料なども参考にし、有用な情報で「テッパン」といえる項目をおさえていくことが必要である。
 

「法人税の鉄則50」特有の構成 – 法人税業務の個別論点毎の解説で構成

総論的な内容は一切なく、役員報酬、リース取引など50個の個別論点毎の解説から構成されています。さらに、各論点は「1 制度のあらまし」、「2 解説とチェックポイント」、「3 記載例(申告書)」から構成されています。
 

どんな論点が書かれているの?

本文の中では50個の「鉄則」が順不同で並んでいますが、項目ごとに分類してみると経理担当者なら押さえておきたいポイントが網羅的にまとめられていることがわかります。

  • 日常的に使う項目
     接待交際費、寄付金、役員給与、原価計算
  • 決算で使う項目
     受取配当金、貸倒引当金、減価償却費、税額控除、青色欠損金
  • 基本的だけど注意が必要な項目
     営業収益(売上)、収益控除項目(値引き・返品・割り戻し)、使用人給与・退職金、保険料、土地・借地権
  • 高度な事前学習の必要な項目
     デリバティブ取引、留保金課税、グループ法人税制、自己株式、連結納税
  • 税務調査で問題になりやすい項目
     役員退職慰労金、行為計算否認、在庫、修繕費
  • その他の項目
     短期前払費用、繰延資産、電子帳簿、国際税務

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 交通費・経費精算システム「楽楽精算」

 

経理担当者なら押さえておきたいポイントを一部紹介

本文のチェックポイントの中から、経理担当者なら特に抑えておきたい内容をいくつか紹介します。

【減価償却費】の解説チェックポイント

使用可能期間が1年未満のものとは、法定耐用年数で判断するのではないことを理解していますか?
  ⇒「使用可能期間が1年未満のもの」とは、その法人の営む業種において一般的に消耗品のものと認識され、かつ、その法人の平均的な使用状況、補充状況からみて、その使用可能期間が1年未満であるものをいいます。

【収益控除項目】の解説チェックポイント

現金で収受した仕入割戻しがないか確認しましたか?
  ⇒仕入割戻しは、必ず重点的な調査が行われます。現金で受け取っている場合に益金の除外になることが多く、重加算税の対象になることも考えられます。

【接待交際費】の解説チェックポイント

ゴルフの接待費用から飲食代だけを抜き出して、5,000円飲食費にしていませんか?
  ⇒この場合の飲食代は主たる目的であるゴルフ接待と不可分一体的な行為ですのでゴルフ接待費用全額が交際費等に該当します。
 

「法人税の鉄則50」はどういう使い方をすればいいのか?

注意すべき取引が出た時に自分の中にアラートが出る様に、まずは各チェックポイントを頭に入れておきましょう。あとは実務で該当箇所の正確な判断基準などを本書で調べる中で、その項目の理解を深めていくというのが効率的な使い方となります。
 

「法人税の鉄則50」に不足している点

「税務調査対策シリーズ」と題されている通り、内容は税務に寄った方針で作られており、節税や有利不利選択といった観点は不足しています。
 

合せて読みたい本

  • STEP式法人税申告書と決算書の作成手順(平成26年版) 宮口定雄・杉田宗久・岡野敏明
  • 図解&設例 連結会計の基本と実務が分かる本 飯塚幸子
  • 平成26年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント 今仲清・坪多晶子・畑中孝介

経理プラスのこちらの記事もお勧めです。
経理プラス:棚卸資産で気を付けたい税務調査で狙われやすいポイント
経理プラス:ルールが細かい減価償却費!税務調査で指摘されやすいポイントと対策
 

著者略歴

濱田 康宏(はまだ やすひろ)

公認会計士・税理士
 昭和41年広島県福山市生まれ、東京大学経済学部経営学科
 平成4年公認会計士登録、平成6年税理士登録
 太田昭和監査法人(現新日本有限責任監査法人)を経て、平成6年7月濱田康宏公認会計士事務所開設、平成19年1月濱田会計事務所所長

岡野 訓(おかの さとる)

税理士
 昭和44年熊本県天草市生まれ、大坂教育大学
 平成13年11月 税理士登録
 隈部会計事務所を経て、平成14年6月岡野会計事務所開設、平成20年11月税理士法人熊和パートナーズ設立、代表社員就任

内藤 忠大(ないとう ただひろ)

税理士
 昭和45年静岡県湖西市生まれ、神奈川県大学経済学部経済学科
 平成13年10月 税理士登録
 大原簿記専門学校、神野博史会計事務所を経て、平成16年9月内藤忠大税理士事務所開設

白井 一馬(しらい かずま)

税理士
 昭和47年大阪府藤井寺市生まれ、近畿大学商経学部経済学科
 平成15年6月 税理士登録
 石川公認会計士事務所(現・税理士法人STM総研)、税理士法人ゆびすいを経て、平成22年2月白井税理士事務所開設

村木 慎吾(むらき しんご)

税理士
 昭和55年大阪府八尾市生まれ、同志社大学商学部商学科
 平成17年5月 税理士登録
 税理士法人ゆびすい、税理士法人トーマツを経て、平成21年9月村木税理士事務所開設

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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