【ブックレビュー】元国税調査官が書く 税金に殺されない経営

【ブックレビュー】元国税調査官が書く 税金に殺されない経営

ベストターゲット

  • 上場・中堅会社の経理担当
  • 税務調査の経験がないベンチャー企業の経営者・CFO・経理・財務責任者

読了目安

  • 1時間30分

30秒で分かる! この本のポイント

  1. 調査官が調査に行きたがる企業というのは実際に存在する。最近は、企業単体から資本グループ、取引グループに着目した調査といった「企画型事案」調査も増加。国税調査官、徴収官、査察官・・・、それぞれの役割を理解して対応することが大事。
  2. 実際の調査は調査官次第で解決することが多く、税務訴訟に至ったケースは09年度で0.04%程度と少なく、99%以上の調査は現場で解決済。
  3. 税金に殺されない経営をするためには、税金に固執せず、地道に黒字をだすことが重要。

引用元:http://www.kanki-pub.co.jp/pub/book/details/9784761269739
滞納破綻はあなたの会社でも起きる!
小規模企業の倒産のほとんどは資金繰りの悪化によるものである。その原因は、売上低迷による収益悪化に加え、消費税・源泉税などの税金支払が大きく影響している。

国税滞納のトップは消費税であり、第2位が源泉税。
法人税は第3位、相続税は4位だ。

本書は20年以上もの間、国税の調査・査察の第一線で行動した著者が、脱税と倒産原因の実際を書き下ろす。
また、数多くの経営実態を見た体験から、中小企業の弱点と改革のポイントも解説。
国税の企業調査の手口を知りながら、経営に活かせる社長必読の1冊。 消費税・源泉税・・・・赤字でも税金は追いかけてくる!

税金と経営についての関係性のことを書いている本なの?

全体の50%が税務調査の基本的な知識について記載している。
元国税調査官が著者であるため、具体的な調査の事例を交えたり、国税調査官ならではの表現を交えたりすることで、難しい税務調査という題材にも興味を持てるように書いてある。
残りの25%は企業が税金で破綻してしまうと言われていることを取りあげて、税金について説明しており、もう25%が、税金に殺されないために経営をどのようにしていけばいいのかということを、著者ならではの視点で書いている。
題名にインパクトを持たせようとしているために、実際の中身との整合性が取りきれていないという印象は否めない。

全部読む必要はある?

前半が元国税調査官としての経験を元にした、税務調査とは、国税庁とはといった記載になっている。税務調査を受けたことのある人にも新鮮な事項が多く、今回を機に知っておいても損はしない内容になっている。また、国税側の考えも分かるので、今後も経理に携わるのであれば一度は読んでおきたい内容となっている。
後半は読み物として興味がある目次の箇所を読むのがいい。
具体的に、以下は押さえておきたい。

不当調査の例とその対応法

  • 承諾なく現物確認調査をされた場合は、社長からの「明示の承諾」がない場合は調査の違法性を主張できる。
  • 取引先に事前連絡がないまま反面調査され、取引先から苦情を受けている場合は、説明を求めることはできるが、違法性を主張することは難しい。ただ、自社の税務調査の状況や経理の内情を漏らしている場合は守秘義務違反を主張できる。

税務調査官のタイプも色々

  • やる気の無い調査官・・・争いや手間のかかることは省きたいと考えるため、無理な否認はせず、無難な項目について修正申告を依頼する。
  • 成果を上げたいと考えている調査官・・・1億円の課税よりも1,000万円の重加算税の対象の発見を重視するため、重加算税に該当するところのみの修正申告を依頼する。

調査官が見る決算書の注目項目

  • 社長への仮払金の変動が大きい
  • 社長からの会社への借入金に比べて社長の申告所得が低い
  • 関連会社間の貸借金額が一致していない

交通費・経費精算システム「楽楽精算」 交通費・経費精算システム「楽楽精算」

「元国税調査官が書く 税金に殺されない経営」はどういう使い方をすればいいのか?

上場・中堅会社の経理担当:

税務調査がくるとわかった時に、税務調査の最新のトレンドを知るため、全体像を把握するといった目的で使うのがよい。

実際の税務調査の対応は、顧問税理士が対応するので、細かいところまでは知らなくていいが、スムーズに準備をするため、社長から質問されたときに、今回の税務調査がどのようなものか答えられるようにするためには読んでおきたい。

税務調査を過去に受けたことがない会社の経営者、経理担当者:

税務調査とはどのようなものか。といった読み物として前半を読んでみて、後半は税金に苦しむ先人の経営者の事例を参考に、自社の経営と税金の関係を見直すきっかけとするために読んでおきたい。

「元国税調査官が書く 税金に殺されない経営」特有の注意点

税法等の法規については、2013年末の規定に基づいているために、今の時点では最新の情報となっているが、今後の法令改正には留意する必要がある。

「元国税調査官が書く 税金に殺されない経営」の足りない点

税務調査の仕組みや、国税庁の組織体制、調査官の区分についてといった一般的な基本知識や、エピソードを踏まえた心構えについての記載は網羅している。しかし、調査官からみて大丈夫だと思われる節税や、個別の経理処理についてのエピソードについての記載はないため、具体的に自社の経理・税務処理について問題ないかの確認は出来ない。

また、経営についても実際に経営者の視点というわけではなく、国税調査官が、様々な経営者を見てきた中でこうしたらいいだろうといった記載になっているので、考え方としては参考になるが、即効性のある具体的に取り組める項目は少ない様に感じる。

合せて読みたい本

  • 社長、税務調査の損得は税理士で決まる(著:税務調査対策研究会/監修:久保憂希也)
  • 長く稼ぐ会社だけがやっている「あたりまえ」の経営(著:岡本吏郎)
  • 国税直轄トクチョウの事件簿(著:上田二郎)

経理プラスのこちらの記事もお勧めです。
経理プラス:棚卸資産で気を付けたい税務調査で狙われやすいポイント
経理プラス:ルールが細かい減価償却費!税務調査で指摘されやすいポイントと対策

著者略歴

垂水毅

1967年生まれ。高校卒業後、国家公務員初級(現:第3種)の採用試験を経て、国税局へ入り、以後、同局にて26年間勤務。
国税局では、査察部、課税第一部資料調査課・統括国税実査官、総合調査担当国税調査官(連絡調整官)を歴任。
23年間、査察調査、税務調査の現場で勤務し、数多くの大口・悪質・困難な税務調査を経験。
2011年8月東京税理士会へ登録。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 服部 峻介

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北海道大学経済学部卒。有限責任監査法人トーマツ入社後、上場企業の監査、内部統制、IPO支援、株価算定、M&A、不正調査等を実施。経営コンサルティング会社役員を経て、Seven Rich会計事務所を開業。スタートアップ企業を中心に、3年で160社以上の新規クライアントに対して会社の設立から会計税務、総務、ファイナンス、IPOコンサルなど幅広い支援を行っている。

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