いつまで続く?マイナス金利が企業経理担当者や企業会計に与える影響5つ

いつまで続く?マイナス金利が企業経理担当者や企業会計に与える影響5つ

2016年1月に、日銀が発表したマイナス金利施策。金融界に大きな衝撃を与えた出来事ですが、実生活にはあまり影響ないから…と思っている人はいませんか?実は、会計処理にも影響が生ずるのです。今回は、マイナス金利が企業に与える影響について、経理担当者に直結する部分を中心に解説します。

経理担当者必須!金利に関する基礎知識

まずは、マイナス金利の基礎知識を確認しましょう。

名目金利と実質金利の違い

そもそも、金利には「名目金利」「実質金利」の2種類があります。

「名目金利」とは、一般的にイメージされる金利のこと。金融機関に預け入れする際、「金利●%」と示されるものです。ただ、名称の通り、名目金利は単に見かけの数値です。その金利が適用される時と、預け入れた時点では物価が異なるからです。

一方、「実質金利」は名目金利に物価上昇率(インフレ率)を加味して算出した金利のこと。

実質金利=名目金利ーインフレ率

という関連性があります。

マイナス金利の概要

日銀が発表した「マイナス金利」とは、日銀が金融機関に貸し出す金額の名目金利がマイナスになるというものです。つまり、預金すればするほどお金が減ってしまうということになります。

デフレが進んでいた影響から、実質金利が名目金利を上回り、結果的にマイナス金利になることもありましたが、それとは性格が異なるのです。

ただ、これはあくまで日本銀行と金融機関の間の話。一般の企業や個人が銀行に預金している金額が目減りしていくという話ではないので、ご安心を。

マイナス金利が今後の会社経営に与える影響

法人や個人の預金に直接的な影響はないとはいえ、日銀がマイナス金利を導入したことで、企業経営にも影響が出てきます。

マイナス金利導入の背景

マイナス金利導入の理由は、アベノミクスの目的の1つでもある「物価上昇率(インフレ率)を2%に近づけること」です。しかし、2008年のリーマン・ショックからゼロ金利施策が導入されており、これ以上金利は動かしようがないと考えられていました。そこで、日銀は量的緩和(金融機関からの国債買取)・質的緩和(買取る資産の対象を拡大)を行い、市場に出回るお金を増やそうと動いてしました。

それでもインフレ率が伸び悩む中、日銀が導入したのがマイナス金利なのです。

マイナス金利導入後の変化

マイナス金利が導入されると、金融機関としては、日銀にお金を預けておいても「損」です。その結果、日銀から預金を引き上げ、顧客企業へ貸し出して金利を取ったり、投資をしたりしようという動きが生まれます。

市場にお金が出回れば、賃上げや設備投資につながり、経済が刺激され景気がよくなる…と見込まれているのです。

今後の会社経営に与える影響

マイナス金利が導入されると、個人・法人と金融機関との預金金利が低くなる可能性があります。一方で、住宅ローンなどの金利も低くなり、お金を借りやすい状況になる可能性もあります。

また、企業業績にも少なからず影響があります。不動産業界、観光業界などは金利低下や円高の影響で業績が上がることが見込まれます。一方、金融業界や保険業界は金利が下がることにより、経営が苦しくなることが予想されます(実際に、マイナス金利の発表を受けて銀行株は下落)。

マイナス金利が会計処理に与える影響

また、マイナス金利の影響は、会計処理にも及びます。
なぜなら、マイナス金利の適用を受けて国債の金利もマイナスとなったからです。そうなると、経理担当者には「割引率」の処理が問題となります。

割引率とマイナス金利

割引率とは、将来の価値を現在の価値に換算するときに使う利率のことです。現時点から見て、将来のお金はいくらになるかは分かりませんよね。その度合を表現するのが割引率です。

割引率の算定の際に、その基礎として国債利回りを利用している場合、割引率としてマイナス金利をそのまま用いるか、ゼロを最低とするかが問題となります。 2016年3月に開催された企業会計基準委員会によれば、マイナス金利を適用しても、ゼロを下限にする方法のどちらも容認する決定がなされました。

ただ、マイナス金利が今後いつまで続くかや、経済の状況等をふまえ、今後この基準が変わる可能性も高いです。

割引率が関係する会計処理

マイナス金利の影響を受ける可能性がある者として退職給付債務、資産除去債務、固定資産の減損、金融商品時価開示等が挙げられます。自社の会計処理にこれらが該当する場合、あらかじめ方向性について考えておく必要性に迫られるでしょう。今後の基準変更やさらなる利回りの変更に備えていかねばなりません。

まだマイナス金利が適用されて日が浅いため、経済に与える影響は未知数ではあります。ただ、企業としては融資による資金調達のチャンスとも捉えられます。この機会に資金調達をし、設備投資や事業拡大に打って出るには、金利が下がっている今が狙い目です。マイナス金利をネガティブに捉えず、積極的に行動することで恩恵を得られるように計画を練りましょう。

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