平成27年度法人税改正の実務ポイント その1

平成27年度法人税改正の実務ポイント その1

今回は、平成27年度税制改正が経理の現場に与える影響について、お話しをしたいと思います。
税制改正の項目は、税制改正大綱が出た段階では色々と考えますが、1年程度経過していざ実務で適用する段階になると忘れてしまうことも多くありますので、おさらいをしつつ実務への影響度合いについて考えておきましょう。

法人実効税率の見直し

平成27年4月1日以後開始事業年度から法人税率が、25.5%から23.9%に引き下げられました。
また、普通法人のうち事業年度終了の時における資本金額が1億円以下で、所得金額が年800万円以下の金額についての軽減税率を19%から15%に引き下げる特例措置の適用期限が2年間延長されることになりました。その後、さらに2021年(令和3年)3月31日まで延長されています。
なお、資本金額が5億円以上である法人との間に完全支配関係がある普通法人は軽減税率の適用はありません。

また、法人事業税の税率の改正も行われました。

外形標準課税適用法人にかかる事業税の構成について

「所得割:外形標準課税 = 6:2」

を年度ごとに以下の割合に変更することとなりました。

平成27年度

「所得割:外形標準課税 = 5:3」

平成28年度

「所得割:外形標準課税 = 4:4」

実務上留意すべき点は、税効果会計を適用する場合の実効税率についてです。
法人税率の引き上げや法人事業税の税率改正の結果、税効果会計で適用する実効税率が変更となりました。
税効果会計では、繰延税金資産または繰延税金負債を計算する際に適用される税率は、決算日現在の税法の規定に基づくことになっています。
そのため、改正前と適用する税率が異なることとなるため、変更に伴って損益に影響が生じることになります。

参考までに東京都の超過税率で算定した場合の外形標準課税適用法人に適用される年度ごとの実効税率は以下の通りです。

従前の事業年度               :35.64%
平成27年4月1日~平成28年3月31日開始事業年度:33.06%
平成28年4月1日以後開始事業年度 :32.26%

受取配当等の益金不算入制度の見直し

税制改正で保有割合の区分が変更されることになりました。
平成27年度税制改正前の区分並びに益金不算入額は以下の通りでした。

【税制改正前】

区分保有割合益金不算入額
完全子法人株式等100%配当等の全額
関係法人株式等25%以上配当等の額-負債利子等の額
その他の株式等25%未満(配当等の額-負債利子等の額)×50%

上記の3区分が、平成27年度税制改正後は以下の4区分に変更となりました。

【税制改正後】

区分保有割合益金不算入額
完全子法人株式等100%配当等の全額
関連法人株式等1/3超100%未満配当等の額-負債利子等の額
その他の株式等5%超1/3未満配当等の額×50%
非支配目的株式等5%以下配当等の額×20%

区分が4つになりましたので、改めて投資先の株式保有割合について確認をする必要がありますので、留意してください。

控除負債利子に関する実務上の留意点

受取配当金の益金不算入制度の改正に伴って、実務上留意すべき点としては、次のような事項があります。

控除負債利子の計算は一部で残ることに

税制改正前は、完全子法人株式等以外については、全て控除負債利子の計算をする必要がありましたが、税制改正後は関連法人株式等以外については控除負債利子を計算する必要がなくなりました。

控除負債利子の計算は、比較的複雑なので、この計算をする対象が減ったことは実務上は、ありがたいことですね。
ただし、関連法人株式等を保有している会社については引き続き計算が必要となります。

また、控除負債利子の計算方法には、原則法と簡便法がありますが、簡便法で使う基準年度が「平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度」となりました。

このため、平成27年4月1日以後開始する事業年度においては、簡便法を適用した場合も基準年度が当期分しかないため原則法での計算結果と一致することになります。

総資産の帳簿価格

控除負債利子の計算を原則法で行う場合には、当期に支払う負債利子等の合計額に、「総資産の帳簿価格」に占める「関連法人株式等の帳簿価額」の割合を乗じます。

改正前は、その他有価証券に係る評価益等相当額・評価損等相当額についての減算・加算が必要でしたが、改正後はそれらの減算・加算が不要となりました。

実務上は、煩雑な作業のひとつでしたから、これらがなくなったことで作業は少し楽になったと思います。

今回は、平成27年度の税制改正に関わる内容のうち、税率の見直しと受取配当金の益金不算入制度の見直しについてお話しを致しました。なお、税制改正は見直しとなっていることがありますので、最新の改正情報もご確認ください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 中尾 篤史

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CSアカウンティング株式会社専務取締役  公認会計士・税理士 日本公認会計士協会 租税調査会 租税政策検討専門部会・専門委員 会計・人事のアウトソーシング・コンサルティングに特化したCS アカウンティング㈱の専務取締役として、中小企業から上場企業及びその子会社向けに会計・税務のサービスをひろく提供している。 著書に「BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる」(税務経理協会)「たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる」(宝島社新書)「経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集 」(日本能率協会マネジメントセンター)など多数

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