グループ会社があるなら検討すべき「連結納税制度」とは?

グループ会社があるなら検討すべき「連結納税制度」とは?

連結納税制度は、平成14年度税制改正にて設けられ平成22年度税制改正で抜本的な見直しが行われ今日に至っている法人税法の制度です。この制度の基本的考え方は、平成13年10月税制調査会法人課税小委員会によれば、「・・企業グループをあたかも一つの法人であるかのように捉え法人税を課税する仕組み・・」というものです。
「連結」という文言は、法人税法のほか、金融商品取引法下の財務諸表等規則、会社法下の会社計算規則にも使われています。ここではこの3つを比較する形で、連結納税制度の概要を見ることにしましょう。

「連結」の範囲

連結納税制度の対象とする企業グループとは、どのようなものでしょうか?
そしてそれは財務諸表等規則や会社計算規則の企業グループと同じなのでしょうか?

それぞれの立法目的の相違から、おのずとその対象とする企業等は異なってきます。
財務諸表等規則では支配権に軸足を置き、親会社を他の会社等(会社、指定法人、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む))の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関をいう)を支配している会社と定義し、子会社をここでいう他の会社等としています。この支配については他の会社等の議決権の過半数などの詳細が定義されています。原則すべての子会社は連結に含めなければなりませんが、一時的支配、連結に含めると利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れある場合や重要性がないと認められる場合など連結に含めない子会社も存在します。計算書類規則では、これとほぼ同様の範囲となっています。

これに対し、法人税法では、内国法人とその内国法人が発行済株式総数の100%を直接・間接に所有する全ての内国法人(普通法人または協同組合等のみ)になります。前者を連結親法人、後者を連結子法人と呼ぶことにしましょう。外国の会社等は含まれず、外国法人に直接・間接所有される内国法人も含まれません。連結親法人、連結子法人に該当するか否かは、法人税法4の2、4の5更に法人税法施行令の関連条文で確認してください。発行済株式総数の100%というのは、名義ではなく実質で判断され、無議決権株式などの種類株式は含まれますが、自己株式、従業員持株会やストックオプション行使により役員や従業員が取得した株式で自己株式を除く発行済株式の5%未満のものは含まれません。
共に「連結」という言葉を使っていますが、範囲が異なることは覚えておいてください。

どのように作成するのか

財務諸表等規則では連結財務諸表を、会社計算規則では連結計算書類を、連結対象企業の試算表全科目を合算し、投資と資本の消去、少数株主持ち分算出、取引・債権債務の消去、未実現利益の排除などを行い、さらに持ち分法などの連結のため処理を行います。たとえば、連結子会社が製造した製品を親会社が仕入れ第三者に販売している場合、連結親会社の売上と連結子会社の仕入、連結親会社の売上債権と連結子会社の仕入債務は無かったものとして相殺され、合わせて連結親会社の棚卸資産に含まれる連結子会社の利益は未実現として消去されます。

他方、法人税法の連結納税制度では、各連結対象企業の法人税法に準拠して計算された課税所得を合算し、連結納税制度に特有の調整を行って連結法人税額を算出します。連結納税申告書の添付書類に連結財務諸表や連結計算書類は求められず、連結親法人と連結子法人の個別貸借対照表、個別損益計算書などが求められます。連結納税制度に特有の調整は、貸倒引当金、受取配当金、交際費、寄付金、連結子法人株式の帳簿価額修正、連結欠損金、さらに所得税額控除、外国税額控除、試験研究費税額控除などの連結納税における税額控除などです。こうして算出する連結所得に連結法人税率を乗じ、税額調整を行って、連結法人税が算出されます。

連結納税制度開始と取止め

連結納税制度の開始並びに取止めは国政庁長官の承認を得る必要があります。開始については導入にあたっての手続きをご参照ください。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 富永 和也

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センチュリー監査法人(現、新日本監査法人)に勤務し、一般事業会社(電気関係・投資関係)・地方銀行・学校法人・労働組合(百貨店・商業関係)等の監査業務を担当。その後、個人事務所を開業。 一般事業会社・学校法人・公益財団法人等の監査業務、会社財産評価業務、内部統制の構築・点検、 記帳指導・税務代理申告等の税務業務、経営コンサルティング業務等を行い、現在に至る。