法人税実効税率の推移と展望。平成28年度の変更で20%台に!

法人税実効税率の推移と展望。平成28年度の変更で20%台に!

平成28年度の税制改正では、法人税率がさらに引き下げられます。実効税率も、とうとう20%台になることが判明しました。平成28年度の税制改正の要点と合わせて、これまで日本の法人税はどのように変動してきたのか、その推移を解説します。

安倍首相が目指す「法人税 実効税率20%台」

法人が負担する実質的な税の負担率のことを、法人実効税率と呼びます。企業が納める税金は、法人税だけでなく、地方税・事業税等多岐にわたります。それら全てを加味し、税の一部が税制上損金に参入されることも考慮して、算出されています。

平成23年度の実効税率は、39.54%。これは、ヨーロッパやアジアの諸外国と比較しても、高めでした(ドイツ:29.66%、中国:25.00%、韓国:24.20%、イギリス20%、シンガポール:17.00%)。

そのため、安倍首相は法人実効税率を20%台に引き下げることを、成長戦略の目玉に据えてきました。「経済財政運営と改革の基本方針 2014」でも、「数年で法人実効税率を 20%台まで引き下げることを目指す。この引下げは、来年度から開始する」ことが閣議決定されています。その後も、たびたび「実効税率20%台」について触れられており、段階的に引き下げが進んでいます。

法人税率が下がることによって税収は下がりますが、国際競争力が改善し、経済成長が復活することで、賃金・株価が上昇すると予想されています。そうすれば、海外からの投資も増え、法人の日本回帰が進む…というのが、政府が目指しているシナリオです。

日本の法人実効税率推移

では、日本の法人実効税率がどのように推移してきたのか見てみましょう。

【平成23年度~平成27年度】

 

  • 23年度改正前:39.54%
  • 24年度-25年度:37.00%
  • 26年度:34.62%
  • 26年度:34.62%
【平成28年度税制改正後】

 

  • 28年度:29.97%
  • 29年度:29.97%
  • 30年度:29.74%

こうして数値で見ても分かるように、実効税率は大幅に低下が続いています。

平成28年度(2016年)税制改正で法人税率は?今後の展望

平成28年度(2016年)の税制改正で、とうとう法人実効税率は20%台になりました。法人税そのものも、平成27年度の23.9%から、平成28年度には 23.4%、平成30年度には23.2%と段階的に引き下げられます。

しかし、法人税が下がると、その分税収が大きく減少します。財務省の試算によると、法人税1%下がると、およそ4700億円の減収となってしまうのです。

法人税減税によって不足した財源は、課税ベースの拡大によって補填されます。具体的には、「租税特別措置」「減価償却の方法」「繰越欠損金の控除」「法人事業税の外形標準課税」等を見直すことで、より広く負担を分かち合う構造へと改革が進んでいます。

「租税特別措置」としては、生産性向上設備投資促進税制が期限通り平成28年度に縮減、平成29年度に廃止される他、環境関連投資促進税制や、雇用促進税制も見直しが入ります。「減価償却の方法」については、建物と一体的に整備されるものに関して、定額法にて償却方法が一本化されます(これまでは、定率法と選択可能でした)。平成27年度には所得の65%とされている「繰越欠損金の控除」も、平成30年度には所得の50%に留まるよう、段階的に利用制限が見直されることになりました。従業員への給与といった付加価値や、資本金に応じて税金を負担する「法人事業税の外形標準課税」がさらに拡大。こういった税制改正と合わせて、法人実効税率の軽減が実現したのです。

ただ、一言に「法人実効税率が軽減される」と言っても、すべての企業に恩恵があるわけではありません。大企業においては減税のメリットは大きくなりますが、中小企業や赤字の企業においては、結果的に増税と変わらない状況となっています。

今後も、法人税自体は減税が進んでいくと予想されます。自社における影響は何か、早めに理解し、必要に応じて手を打つようにしましょう。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。