中小企業等経営強化法とは?概要とメリットを理解しよう

中小企業等経営強化法とは?概要とメリットを理解しよう

中小企業等経営強化法のあらましと目的

中小企業等経営強化法とは、中小企業が「稼ぐ力」を身につけることを、国が後押しするために整備された法律です。具体的には、国が、生産性向上に役立つ取組みを分かりやすく中小企業・小規模事業者等に提供し、生産性を向上させるための取組みの計画(経営力向上計画)を策定した中小企業・小規模事業者等を税制面・金融面で支援することが定められています。
(参照元URL:経済産業省HP 資料 中小企業経営強化法について

我が国においては、人口の減少・少子高齢化の進展や国際競争の激化、人手不足など、様々な課題を抱えており、中小企業・小規模事業者等を取り巻く事業環境は厳しさを増しています。そのような環境の中で生産性が低迷し、人材確保で困ったり、事業が持続的に発展できないような中小企業・小規模事業者等も増えています。このような事業環境の下で、中小企業・小規模事業者等がこのような厳しい環境を克服し、成長できるようにするためには経営力の向上が必須であると考えられ、中小企業・小規模事業者等の生産性向上のための法的枠組みとして設けられました。
(参照元URL:中小企業庁HP 資料 基本問題小委員会中間報告

中小企業経営強化法はどんな仕組みになっているの?

事業所管大臣は、この法律に基づいて「事業分野別指針」を策定します。事業分野別指針とは、顧客データの分析、ITの活用、財務管理の高度化、人材育成等、事業者が行う経営力向上のための取組みをまとめたものです。この事業分野別指針では、業種毎の現状認識、課題、目標、経営力向上に関する指針などがまとめられています。
そして、中小企業・小規模事業者等は、この事業分野別指針を踏まえて、自社にあった人材育成の取組、コスト管理のマネジメントの向上や設備投資等、経営力を向上させるための取組み内容などを記載した事業計画(経営力向上計画)を策定します。自社の経営力向上計画について、申請し、認定を受けた事業者は、固定資産税の特例、中小企業経営強化税制といった税制上の優遇措置や金融支援等の特例措置を受けることができるようになります。
(参照元URL:中小企業庁HP 中小企業等経営強化法 経営力向上計画策定の手引き

中小企業等経営強化法の活用で得られるメリットとは

中小企業等経営強化法に基づいて経営力向上計画の認定を受けた事業者は、計画実行のため税制措置と金融支援を受けることができるというメリットがあります。
税制措置には、固定資産税の特例と中小企業経営強化税制があります。

  1. 固定資産税の特例
    中小事業者等が、適用期間内に、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの期間に一定の設備を新規に取得したときに、固定資産税が3年間、1/2に軽減されることとなります。
    なお、平成29年度税制改正により新たに対象に追加された設備(測定工具及び検査工具・器具備品・建物附属設備)は、適用できる地域とそうでない地域が設けられています。なお、この特例は該当期間で終了しております。
  2. 中小企業経営強化税制
    青色申告をしている中小企業者等が、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて、一定の設備を新規に取得し、一定の事業で使用した場合に、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除のいずれかを適用することができます。なお、この制度は令和3年(2021年)3月31日までの期間が対象となり、当初からは2年延長になっています。

上記における中小事業者等とは、資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人・資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人・常時使用する従業員数が1,000人以下の個人をいいます。ただし、大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人等については資本金が1億円以下であっても該当しません。

金融支援等の特例措置には、日本政策金融公庫といった政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する通常とは別枠での信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援などがあります。
これには、日本政策金融公庫による低利融資、商工中金による低利融資、中小企業信用保険法の特例、中小企業投資育成株式会社法の特例、日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット、中小企業基盤整備機構による債務保証、食品流通構造改善促進機構による債務保証があります。
(参照元URL:中小企業庁HP 中小企業等経営強化法に基づく税制措置・金融支援活用の手引き

中小企業等経営強化法による支援を受けるためにはどうしたらいい?

中小企業等経営強化法による支援を受けるには、兎にも角にも「経営力向上計画」を作成しなければなりません。経営力向上計画とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資等により、事業者の生産性を向上させるための計画です。「経営力向上計画」というと何かすごく難しいもののように思えますが、現状認識、目標、「事業分野別指針」から選んだ取組内容などを記載する実質2枚の様式のものです。様式も定められており、そこに記入していけば策定することができます。「事業分野別指針」から選んだ取組内容も記載しなければならないので、策定する前には「事業分野別指針」を読まないといけません。

なお、小規模事業者の方は、経営計画作成アプリ「経営計画つくるくん」も用意されているので、このアプリを活用して、自分で作っていくこともできます。
中小企業等経営強化法を利用して各種金融支援の活用を検討する場合は、経営力向上計画を提出する前に、関係機関に相談しておきましょう。

まとめ

中小企業等経営強化法は、経営力向上に取り組む中小企業等に優遇を与える、という少し独特の制度です。このような制度は、しっかりと活用してメリットを享受することが得策です。経営力向上計画と聞くと少し難しく感じますが、実質2枚ですし、そこで記載することの大半は、本来、経営者として考えておかないといけないことです。これを機に経営環境の分析や経営力向上のための施策にしっかりと取り組んでみてはどうでしょうか。

この内容は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。

著 者 公認会計士 松本 佳之

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税理士・公認会計士・行政書士 1980年兵庫県に生まれる。2001年公認会計士二次試験合格。2002年関西学院大学商学部卒業、朝日監査法人(現あずさ監査法人)試験合格、公認会計士登録。2007年税理士登録後独立し、北浜総合会計事務所を開設。監査法人勤務時代は企業公開部門に所属し、さまざまな実績を重ねる。

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